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小説「涼宮ハルヒの消失」の世界でキョンと長門が会った後からのパラレルワールド的SS。一応、うp順にストーリーはつながってます。長門は俺の嫁。谷口自重。ずっと長門のターン。ちなみに消失を読んでない方には分かり辛いと思います。
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今回はキョン目線でのお話。
よって強制的に谷口自重させた。

 俺の名前は……なんてものはどうでもいいか。とりあえず皆からはキョンと呼ばれている。好きなあだ名かと聞かれれば、首を横に振らざるを得ないが、あだ名なんてものはたいていそんなものだろう。俺は幸か不幸か、以前まで涼宮ハルヒとその愉快な仲間たちによって、平凡だったはずの高校生活をさんざ~ん振り回されていた。しかし、いつの間にか俺だけを取り残して世界は変わっちまった。涼宮ハルヒの代わりに朝倉が復活するという選手交代が起き、長門も朝比奈さんも普通の女の子になってしまった。涼宮ハルヒと小泉に関して言えば、近くの高校に進学していたことを後になって知った。だからといって、いまさら関わるつもりもないし、向こうは俺のことなんて覚えてないだろう。長門や朝比奈さんもそうだったしな。そりゃあ、寂しくないと言えば嘘になるさ。迷惑を被ってはいたものの、なんだかんだ言って楽しかったと言わざるを得ない。だとしても、俺はこっちの世界を望んだ。メイド服が常となっていた朝比奈さんを見られなくなったのは、相当痛いが、本来はそんなことする必要ない方が朝比奈さんも幸せなはずだ。もしかしたら、必死に頑張ってみれば元の世界に戻る方法があったかもしれない。いつものように長門がヒントを残してくれていたかもしれない。だが、もうそんなことはどうでもいい。本来の俺なら、最後まで諦めずにヒントを探しただろう。俺だってやるときはやる男だ。そこは譲れない。絶対にだ。だが、そんな俺に革命を起こしてくれた奴がいた。今、目の前で本を真剣な眼差しで見つめている少女だ。それだけなら、以前と何ら変わらないわけだが、今のこいつはちーっとばかり、人間らしくなっている。もう少しだけ、この続きを見たいと思ったのさ。考えても見ろ、普段全く表情も変えて見せなかったし、何を考えてるのかも解らなかったような奴が、急に女の子っぽい振る舞いをしたりするんだぞ? そんな少女を見て、なんとも思わない男がいるんだったら、是非とも俺の前に出てきて欲しいもんだね。

「長門」

「何」

「明日からはどうするんだ」

「別に」

「部活はお休みか?」

 散々だった期末テストも終え、明日からは春休みに入る。SOS団ならハルヒが無理にでも何かしらの計画を立てて実行されたんだろうが、今の部活では長門と二人きりだ。こいつがやらないと言ったら、春休みの活動もないわけだ。俺としては、家にいても特別やることもないわけで、まあどちらでもいいわけだが。

「部室には来る」

「そうか」

「でもあなたには強要しない。自由」

「わかった」

 ちったあ人間らしくなったとは言え、話し方や普段はあまり変わらない。これがこいつの性格なんだろうと考えると、仕方のないことだが。

「なあ、長門」

「今度は何」

「お前は自分が宇宙人の世界と、普通の人間の世界だったら、どっちがいい?」

「またその話」

「いいから答えてくれ」

「人間」

 ま、この世界の長門はそう言うだろうな。宇宙人なんてのはいるわけないってのが当たり前の理屈だ。もしかしたら、どこか遠い星に地球と同じような環境の場所があって、人間ぽい、つまりは宇宙人なのだが、いる可能性もあるかもしれない。ただ、その宇宙人が地球に今存在しているというのは、限りなく0に近い。しかし長門よ、前の世界の何でもこなしてしまう超人で俺がよく知っている方の長門よ、お前はどっちを選ぶんだろうな。こっちの方がいいって言ってくれるか? それとも元の世界に戻る方法を探さなかった俺を恨むか? 教えてくれ。またパソコンにでもなんでもいい。YUKI.N>と表示させて答えてくれ。お前はどっちの世界を望むんだ? なんとなく感じてるんだぜ。世界を変えちまったのはハルヒでもなんでもなく、お前なんじゃないかってな。

 

 部活を終え、帰り際に谷口と国木田に会った。

「やぁ、キョン。今帰り?」と国木田。「うーっす」んでもって谷口。

「しっかしお前が文芸部とはなぁ。未だに信じられないぜ」

「うるせぇ」

「でも長門さんだっけ? あの子は俺的にAマイナーくらいはいくな。ちょ~っと大人しすぎて見た目も気にしてないところが減点要素だが、あれは光る宝石ってやつだぜ」

「誰もお前の評価など聞いてない」

「キョンはもっと明るい子が好きだと思ってたけどねー。意外だったよ」

「そうそう、ってげっ! アレは……」

 谷口の視線の先にはハルヒがいた。隣には小泉がいる。何度か見かけたことはあるが、俺は知らないフリをしていつも通り過ぎた。だってそうだろ? 知らない奴から名前を呼ばれて挨拶されても、そんなのただのストーカーじゃないか。

「誰? 知ってるの?」

「あいつはなぁ……涼宮ハルヒと言って、俺と同じ中学だったやつだが、あれほど最悪な女はこの世には存在しないな。まぁ面がいいから寄ってく男は多かったがな」

「へぇ。ん? その名前どこかで聞いたような」

「まあ、有名だからな。あいつの常軌を逸した行動っぷりには。他の学校に名前が知れ渡ってても不思議じゃあないな」

「そうじゃなくて。つい最近どこかで……そうだ、キョンが言ったんだよ」

 確かに俺はクラス中で涼宮ハルヒの名前を叫んでしまった。いきなり世界が変わっちまってて、誰もあいつのことを覚えてないんだからな。代わりに俺を殺そうとした朝倉がいたりするもんなら、そりゃ俺だって泣きたくもなる。幸い、こっちの朝倉は殺人鬼でもなんでもない普通の人間らしいがな。

「あの子と知り合いなの? キョン」

「いや、知らないな」

「なんだ? お前、涼宮のファンか? や~めとけ、やめとけ。あいつだけはやめたほうがいい。断言するぜ」

「あ……」と、国木田が呟いてとっさに後ろを振り返ると物凄い形相で谷口を睨んでいるハルヒがいた。

「ぎょえええ」言葉になってないぞ、谷口。

「あんたねえ、私の悪口を言うのはかまわないけど、そういうのは本人の耳に入らない場所でやってくれる?」

 隣でニコニコ笑ってる小泉め、お前は暢気なもんだよなぁ。こっちの世界ではどうだ? 元気か? 涼宮の監視という役割から逃れられたかと思えばまた一緒にいるのか? 今度はどうした、転校生だという理由だけで目をつけられでもしたか。

「あれ? あんた」

 と言ってハルヒは俺の顔をマジマジと見つめる。まさか、俺と同じように記憶が残ってるのか?

「あんた北高の生徒? ううん、このバカと同じ制服だし、そうよね」

「だとしたら何だ」どうやら俺の予感は外れらしい。

「名前は?」

「少なくともジョン・スミスじゃないことは確かだ」

 このとき、俺はどうしてこんなことを言ったのだろうか。もうハルヒには関わらないと決めたのに何故ジョンという言葉を言った?

「あんた……ジョン?」

「んなわけねーだろ、涼宮。こいつが外人に見えるか?」

「うるさい谷口。あんたそんなんだから、たった五分で興味がなくなったのよ」

「う……それは口に出すな」

「ふん。付き合って五分で女の子にフラれるなんてとんだバカね」

「おやおや」小泉よ、ダッマーレ。

「いくわよ、小泉くん」

 そう言ってハルヒと小泉は去っていった。谷口よ、今度ばかりはよくやったと言ってやろう。国木田の「五分でフラれたって本当?」という質問にも頑張って答えてやってくれ。

 

 俺は家に帰ると妹のボディアタックを幾度となく華麗にかわしながら明日からの予定を考えていた。とりあえず文芸部には顔を出すとして、それだけじゃ時間も嫌というほど余るな。バイトはこないだまで必死にやったばかりだし、しばらくは懲り懲りだ。何か面白いことが向こうからホイホイやってきてくれると助かるんだが、そんなに甘くもない。何も動かなければ退屈な人生を送るのが世の定めだ。いつの間にか頭の中に先ほど見たハルヒの顔が浮かんできていた。何を考えているんだ、俺は。やめたやめた。いいじゃないか。退屈な春休み、上等だ。普通の人生、ああ嬉しいね、涙が出るぜ。

 

 俺が朝の十時ごろに文芸部の部室に顔を出すと、何時からいたのか長門が一人で本を読んでいた。

「早いな」

「そうでもない」

「本ばかり読んでても退屈じゃないのか」

「そうじゃなかったらここには来ない」と言って俺の顔を見る。少ししてから「たぶん」と付け加える。

 俺は鞄から携帯ゲームを取り出す。世の中も変わったもんだ。と言っても俺がいたあのへんてこりんな世界を指す意味ではなく、一般的な世の中を指す。こないだまでPS以外のゲーム機には見向きもしなかったくせに、今では携帯ゲーム機が主流になりつつある。まあ、こうやって持ち運びが出来るし暇つぶしにはもってこいではあるが。俺がなかなかクリア出来ないステージで頭を抱えていると、長門が席を立った。「お腹すいた」と俺に何かを求めるように見つめてくる。おいおい、俺を見たって食べ物は出てこないぞ。

 結局、春休みで学食もやってなかったため、近くのコンビニに買出しに行くことにした。俺は適当にパンをいくつか見繕い、レジへと持っていく。朝比奈さんがお茶を入れてくれることもないので、飲み物も忘れずに。代金を払って品物を受け取ると、長門はお弁当コーナーで立ち止まったまま動かなかった。

「何が食べたいんだ」

「コロッケ弁当」

「ん~? ないな」

「そう」

「お、これ旨そうだぞ」と言って、ハンバーグ弁当を指差す。

「それにする」

 結局、なんでも良かったのか俺が薦めたからなのかは定かではないが、長門はハンバーグ弁当をレジへと運んだ。と思ったらすぐに引き返してくる。「どうした」と聞くと「財布、部室」と泣きそうな目になる。わかった、ここは俺のおごりだ。長門お前、確信犯か?

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