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小説「涼宮ハルヒの消失」の世界でキョンと長門が会った後からのパラレルワールド的SS。一応、うp順にストーリーはつながってます。長門は俺の嫁。谷口自重。ずっと長門のターン。ちなみに消失を読んでない方には分かり辛いと思います。
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いったい俺は何を書いてるんだろう。途中で方向性が分からなくなってきた。
普通ver.の長門がたまに混ざってるが、細かいことは気にしないことにした。
読んで。おいしい?



 夕方になり、私は帰り支度を始める。下校時間ギリギリまで待ってみるが、部室には誰も現れる気配はない。部室の戸締りをし、職員室に鍵を返してから岐路に着く。帰り道の商店街でコロッケ弁当を注文する。家に着いてからお茶を湯飲みに注ぎ、何もない部屋でコロッケ弁当を食べ始める。一口だけ口にした後にチャイムが鳴る。毎度決まったように現れる朝倉さんを部屋に迎え入れ、作りすぎたからという理由で持ってきた野菜炒めを二人で食べる。私が買ってきたコロッケ弁当は「こんなものばっか食べてたら体に悪い」と言われて没収される。

 

「どう? 彼とは最近仲良くしてる? まさか喧嘩なんかしてないでしょうね」

「してない」

「なら、いいけど。何かされたら遠慮なく私に言いなさいね。ぶっ飛ばしてやるんだから」

 と朝倉さんは握りこぶしを作って物騒なことを言う。実のところ、朝倉さんはあまり得意ではない。ではどういう人だったら得意なのかと聞かれると困るのだが、とにかく朝倉さんは苦手だ。同じマンションに住むよしみで何かと良くしてくれるし、悪い人ではないだろう。こうして私に余った料理を分けてくれるのは非常に助かっていた。ただコロッケ弁当を取り上げるのはやめて欲しい。

「でも彼、最近おかしいのよねえ」

「いつもおかしい」

「それもそうね。でもそうじゃなくて。授業が終わると真っ先に帰るのよ。でも部活には来てないんでしょ? 何やってるのかしら」

「わからない」

 ここ一週間ほど彼は部室に来ていないのだ。最初の二、三日は私の元に来て「今日は行けない」と告げにきたが、それもなくなった。彼にだって用事がある時だってあるのだろう、と思っていたが、私に愛想を尽かして来なくなってしまったのかもしれない。覚悟はしていたはずだった。いつ彼が来なくなってもおかしくない状況だった故に、こうなっても仕方のないこと。解ってたはずだった。そもそも入部してきた理由も不明なままだ。彼が文芸部の一員として存在し続ける保証など、どこにもなかったのだ。

「とにかく、ちゃんと捕まえておかないとダメよ。キスくらいはしたのよね?」

「ない」

「あら、そうなの? 高校生なんだから付き合ってるならそれくらい普通よ」

 何を基準として普通なのか解らないが、キスという行為に至った事実はない。

「あなたたち、付き合ってるんでしょ?」と朝倉さんは付け足す。付き合ってるというのはどのような状況を言うのだろうか。確かに文芸部の部員としての付き合いはある。そういう意味では答えはYESだ。しかし朝倉さんの意味する答えとして正しいのかは解らない。とりあえず「そう」とだけ答えておいた。

「そうよね。それはとても良いことだわ」と朝倉さんは微笑む。

「あーあ、私にも素敵な彼氏が現れないかしら」

「彼氏って何?」

「何よ、とぼけちゃって。付き合っている好きな男性のことよ。自分だけいい思いしちゃって。憎いったらないわ」

 私は彼の事が好きだ。それは自覚していた。人を好きになるという理屈は本で読んだことがある。私にとっての彼はそれに当てはまる。そして私たちは文芸部の一員として付き合いをしている。朝倉さんの言う通りなら、彼は私の彼氏ということになるのだろうか。彼氏、私の彼氏。よく解らない。

「で、その彼氏さんは部活にも出ずにいったい何をしちゃってるのかしら」

「さあ」

「長門さんが他の男子にでも気が向いたりしたらどうするのかしらねえ」

「さあ」

「そうよ、そうしちゃいなさいよ」

「何を」

「他の男子と仲良くしてるところを見せ付けてやるのよ」

「何故」

「そうすれば彼も嫉妬するに違いないわ」

「どうすればいいの?」

「たとえば、そうね……彼の見てる前で他の男子に抱きついてみるとか」

「やってみる」

 朝倉さんが言うには他の男子に気があるフリをすれば彼は私に興味を向けてくれるはずという。機会があれば試してみることにした。

 

 彼が部室に来なくなってから一月が経過しようとしていた。朝倉さんとの計画は実行できずにいた。というより、彼が部活に来る機会もないので、彼と話すということさえ出来ずにいたのだ。ある日、廊下を歩いていると彼に会った。すれ違い様に「よお」と声をかけられる。

「わりいな、まだしばらく顔だせねーんだ」

「そう」

 そうして一人で過ごす部活の時間が過ぎていった。なんてことはない。元の日常に戻っただけ。彼が入部してくるまでは私一人だった。問題ない。授業に出て部室で本を読み、家でコロッケ弁当を食べる。それの繰り返し。日によって違うのは朝倉さんが押しかけてきてコロッケ弁当を没収されるかされないかの違いだけ。今までもそうだった。そしてこれからも。

 無意識のうちにパソコンを起動させていた。ぎこちなくキーボードを打ち込む。小説を書いたのは何度目だろう。才能があるのかないのかも解らない文章をただ徒然なるままに打ち込む。本を読むのは好きだが、書く方はどうも苦手だ。登場人物の心情をどう描いていいのか解らない。私がもっと普通の女の子だったら、もっと表現できるのだろう。

 

 一人の少女は会えなくなった少年のことを想い続ける。やがて我慢の限界に達した少女は思い切って少年へ手紙を送る。「私という個体もあなたには戻ってきて欲しいと感じている」それを読んだ少年は無事に少女のもとへと帰ってくるのだ。

 

 書き終えた後、自然と涙がこぼれてくるのを感じた。この感情は私には今までなかったものだ。寂しい。誰かがいないという事実が私の胸を大きく締め付けた。一生会えなくなるわけでもないのに、この気持ちは何。いつも近くで見つめていたはずなのに、どうしてあなたは今ここにいない。私は思いを寄せる場所を失っていた。今まで何かあっても本を読むことで気を紛らわせることが出来た。だけど今はそれが出来ない。本を読むという行為以外のことが頭の中で渦巻いている。苦しい。体の細胞が破壊されて感じる痛みとは違う。感情の中の痛みが苦しい。部室に一人でいることが辛くなっているのに気付いた。こんな思いをするのに、何故私はここにいるのだろう。来ない誰かを待っているのだろう。いっそ、もう来ることはないと教えてくれた方が楽になれる。

 

 私は次の日から部室に行かなくなった。あの場所に行くと彼のことを思い出してしまう。待ち続けてしまう。そんな自分が嫌だった。私は居場所を消失してしまった。

 

 もうすぐ一年生が終わろうとしていた。春休みまであと少し。その前に期末テストというイベントがあるため、幸いにもそのための勉強に集中することで文芸部のことを忘れられた。家で勉強をしていると、いつもの時間に朝倉さんが訪れた。

「お、ちゃんと勉強してるね。偉い偉い。でもご飯は食べないとダメよー」

「いい」

「ダーメ」そう言ってテーブルの前に私を座らせる。勉強を中断して朝倉さん特製の肉じゃがを口に運ぶ。「長門さんもたまには料理しないとダメよ」

「いい」

「それくらい出来ないと彼にも見放されるわよ」

「そう」

「そこで今日は料理の本を持ってきてあげたわ。本は好きなんでしょ? これ見て勉強しなさい」

 そう言われて受け取ると表紙には「男が選ぶ彼女に作ってもらいたい料理特集」と書いてあった。

 

朝倉さんが帰った後、卵焼きにチャレンジしてみた。しょっぱかった。どうやら砂糖と塩は異なった味を生み出す物体らしかった。

 

期末テストが始まる前日に彼に会った。

「よぉ」

「久しぶり」

「どうしたんだよ? 昨日部室に行ったら誰もいなかったからびっくりしたぞ」

「そう」

「今日は来るのか?」

少し考えた後、「行く」と伝えた。

 

授業が終わって部室に向かう。鍵をかけていつもの場所に座って参考書を開く。明日は数学のテストがある。国語は得意だが数学はいまいち苦手だ。なかなか満点が取れない。しばらくしてドアノブが回る音がする。「あれ? 長門いないのか?」

「いる」ドア越しに言う。

「なんだいたのか。鍵閉まってるぞ」

「そう」

「早く開けてくれ」

「部室に行くとは言った。しかし鍵を開けて待ってるとは言ってない」

「っておい。頼むから開けてくれ」

「何故」

「何故って……それは俺が文芸部の一員だからだ」

「そう」私はドアを開けた。目に飛び込んできたのは大きなダンボールを抱えた彼の姿だった。「ったく、長門なりの冗談かぁ? 頼むぜ、おい。しばらく来れなかったのは謝るからさ」

「それ何」

「お、これか? 聞いて驚くなよ? 最新式のパソコンだ。新しいのが欲しいって言ってただろ? 苦労したんだぜ、これ買う為にバイトしてさ」

「どうして」

「誕生日なんだろ? HAPPY BIRTHDAY、長門」

「違う」

「へ?」

「私の誕生日は今から数えて三ヵ月後。今はその日ではない」

「あれ? だって部室のカレンダーに赤丸してあったぞ? あれって……違ったか?」

「違う。あれは期末テストの前日を意味する」

「ってーと、何か? 俺は誕生日でもなんでもない日のために必死にバイトして期末テストの存在を忘れてたってことか?」

「そういうことになる」

「そうか……」と彼は呟いてテーブルにダンボールを置く。

「俺はなんつーことを! なんつーことを! フロイト先生も爆笑もんだっぜ」

 急に彼は床に転がり落ちて叫び始める。それを横目に彼に近づく。彼の動きを止めて顔を近づける。「お、おい長門……」

「普通の高校生ならこれくらい普通」私は朝倉さんの台詞を頭の中で再生する。

「お前、したことあるのか?」

「初めて」

いったん離れた顔を再び近寄せる。

「嫌ならやめる」

「嫌じゃないが、いいのか?」

「いい」

「わかった」

「そう」

キスとは異性が相手を求め合うときにする行為。私という個体は彼を求めている。したがって、私は彼にキスすべき。それが普通。

 

「WAWAWA、忘れ物~♪」

今にも私と彼の唇が合わさらんとする瞬間に部室の扉が勢いよく開かれる。「ぎょえぇ」というわめき声が聞こえた。彼は谷口の存在を確認するやいなや私を遠ざけた。邪魔な人。私は谷口に詰め寄る。谷口はびくんと驚いた表情を見せて後ろに下がるが逃がさない。谷口の腰に手を回して抱きつく。「ええええ」と上から声がする。

谷口はとっさに私の体を離し、ネクタイを直す。

「それは出来ぃぃぃぃぃん」と去り際に台詞を吐いて行ってしまった。

 彼の方に向き直して聞いてみる。「嫉妬した?」

 

「ったく、おかしいと思ったら朝倉の入れ知恵か。まったく」

「あははは。まさか本当に誰かに抱きつくとは思わなかったわよ」

 期末テストの勉強をしてなかった彼が勉強を教えて欲しいということで家に招待した。ついでに料理というものを実践することにした。既にテーブルに並べられている朝倉さんが持ってきた料理の隣に私が作った卵焼きを置く。

「長門」

「何」

「黒いぞ」

「そう」

「食えるのか? これ」

「塩と砂糖は的確に判断した」

「そりゃ当たり前だ……」

「あはは。頑張って召し上がれ、この色男くん」

「朝倉、いただきます」と言って彼は朝倉さんの料理に手をつける。

 しばらくその様子を観察していたが、卵焼きは手をつけられずに残っていた。

「食べて」

 そう言って彼の前に卵焼きを差し出すと彼は少し考えた後、恐る恐る卵焼きに箸を運ぶ。

「おいしい?」

「ああ」

 再び別の卵焼きを無言で差し出してみる。彼も無言で食べる。そしてもう一度。

「うっ……産まれる……」と彼は呟く。

 その様子を見て朝倉さんは何か納得したように彼の動向を見守っていた。

「あの、そろそろ俺に勉強を教えてくれないか」

 私は彼の台詞を無視して、また卵焼きを差し出す。

「いっぱい作ったから」

「そ、そうか」

「愛ねえ、えらいわ。あなた」

 朝倉さんは笑いながら、自分の分の卵焼きをこっそり彼の皿に移していた。

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